Jeremy Brown
「なぜ」から始めよ(Start With Why)は、組織や個人の活動や存在意義の「なぜ」を発見するためのプラクティスです。 「なぜ」は考えて生み出すものではありません。 「なぜ」は既にあなたの中にあるはずです。 考えて、探して、「なぜ」に気づきましょう。
なぜあなたはここにいるのでしょうか? なぜあなたの組織はそこに存在しているのでしょうか? 単に株主を満足させればそれでよいのでしょうか?
ハーバード大学のマーケティングの教授のセオドア・レビットの素晴らしくもこう言いました。 「人々は1/4インチのドリルを買いたいわけではない。彼らが欲しいのは1/4インチの穴なんだ。」 セス・ゴディンの著書「This Is Marketing」では、彼は次のように述べています:
この教訓は、ドリルは単なる手段でしかなく、人々が真に欲しいのはドリルが作る穴だということです。 しかし、この解釈も十分ではありません。実のところ誰も穴を欲しがっているわけではありません。人々が本当に欲しいのは、その穴を掘った後に壁に取り付けられる棚ではないでしょうか。 いやいや、人々が欲しいのは、壁に取り付けた棚で、どれだけ物を片付けられるかを見て、どれだけ感じるかだ。 しかし、待って…。それを自分たちでやったという満足感も欲しい。あるいは、妻が夫のDIYスキルを賞賛することによって得られるステータスの向上。あるいは、ベッドルームが散らかっておらず、安全で清潔だということを知っているときの安心感。 「人々は1/4インチのドリルビットを買いたいわけではない。彼らは安全性と尊重されることを欲しがっているのだ。」
組織はしばしば、"株主価値の最大化"のような無味乾燥な言葉で組織の目的(または彼らのなぜ)を表現しますが、 そのような言葉で顧客や従業員が行動を動機付けられることはありません。 例えばここに天気予報の会社があったとして、 この会社は最も正確で信頼性の高い予報を提供するために存在するのでしょうか、 それとも天候に起因する不利益からあなたを守るために存在するのでしょうか?
目的は力強いものです。 あなたの目的は人々とあなたを繋げ、人々を動かします。 組織の目的は人々を結びつけ、アイデアを生み出します。 才能ある人材を見つけて確保するのがますます難しくなる世界で、あなたの目的は強力な差別化要因になるでしょう。 目的は信念とエンゲージメントに結びつきます。
Dan Pinkは彼の著書「Drive: The Surprising Truth About What Motivates Us」で、 「MITや他の大学で行われた研究 は、簡単な仕事(タスクが基本的かつ単純なスキルで構成されている場合)であれば、給与/ボーナスがパフォーマンスに繋がることを示している。(裏を返すと、複雑な仕事では給与/ボーナスとパフォーマンスの相関が低い。)」と述べています。 これは、タスクが予め定義された作業ステップと唯一の解を持つ問題に対して有効でした。 一方、複雑な仕事(タスクが認知的なスキル、意思決定、創造性、または高次の思考を含む場合)、高い給与は低いパフォーマンスをもたらしました。 (すなわち、給与/ボーナスだけでなく、目的・動機付けが高パフォーマンスに繋がるということ。) 管理職の者は、従業員が基本的な欲求を満たすことに集中せず、公平に給与を受け取っていると感じるように十分な給与を支払うべきです。 十分な給与を支払わないと、従業員は動機づけられません。 Pinkは、十分な給与を支払うことで「お金の問題をテーブルから取り除くべき」と提案しています。 Pinkは、複雑な仕事をこなす従業員を動機づけるためには、以下の3つの要因を提供する必要があると述べています:
私たちの中には意味を求める深い願望があり、組織の「なぜ」は従業員や顧客とのより深いレベルでのつながりを助け、より大きなエンゲージメントをもたらすことができます。
Simon Sinekは、人や組織が利己的な理由以外の理由によって動いていると感じた時、信頼が生まれ始めると言っています。 なぜ、どのように、何をするのかを綺麗に一致させることは、信頼を築く方法なのです。
製造業などの企業は、競合他社との差別化に常に挑戦しています。 競争相手を追いかけ、機能ごとに競合との優劣を競うことは、「何をするか」に注目する風潮を促進します。
しかし、顧客や従業員は「あなたが何をするのかの理由」に触発されるため、 「なぜ」からコミュニケーションを始める企業は、市場での柔軟性が高まります。
我々は常に誰かと競争しています。より良い品質、より多くの機能、より良いサービスで。 常に競合他社と自分たちを比較しています。そんな様では、誰も私たちを助けたいとは思ってくれないでしょう。
昨日の自分/自組織よりも良くなることを目指して毎日仕事に臨むとしたらどうでしょうか? 会社を、自分が入社したときよりも良い状態にしてから去りたいということ以上に立派な理由はないと思いませんか?
すべての組織は「なぜ」という理由から始まりますが、偉大な組織だけが年々その「なぜ」を明確に保持しています。 設立された理由の「なぜ」を忘れた組織は、自分自身を超えるのではなく、他の誰かを超えるために毎日競争に参加することになります。
あなたはおそらく、ビジネスを開始する前に市場を調査することが重要だと聞いたことがあるでしょう。 市場調査を行い、お客様を理解し、その後にニッチを構築するというのが王道です。 しかし、Sinekはそうは考えていません。 Sinekによれば、「なぜ」は、何を達成したいのかを先に考えてそこに到達するための適切な戦略を考えることから来るものではありません。 市場調査や、お客様や従業員へのインタビューから生まれるものでもありません。 「なぜ」を見つけることは、今の自分の位置から全く逆の方向を見ることです。「なぜ」を見つけることは、発明ではなく、発見なのです。
「なぜ」はあなたの中にあります。自分の「なぜ」を見つけて理解したら、最も難しい部分はそれに忠実であり続けることです。
「なぜ(Why)」 と「どのように(How)」の違いは、組織のビジョンとミッションステートメントの違いにも関連します。
ビジョンは創業者の意図、つまり会社が設立された「なぜ」です。 ミッションは、そのビジョンで述べられた未来をどのように作り出すかの説明です。
両方が明確であれば、「なぜ」 と「どのように」 のタイプのリーダーが、パートナーシップでの役割を明確に定義するのに役立ちます。
個人や組織は、自分たちの「なぜ」を見つけるために自分達独自のアプローチをとることができます。
Red Hatでは、全組織でOpen Decision Frameworkを用い、 Red HatのWhy、即ち、 「Openであることは世界の可能性を大きく広げる(Open unlock's the world's potential)」を見出しました。
「なぜ」から始めよ(Start With Why) をチームや顧客、ステークホルダーと実施するにあたりより詳細にお知りになりたい場合は、以下のリンクを参照してください。